最高裁判所第一小法廷 昭和39(オ)1347 判決
主 文
原判決を次のとおり変更する。
上告人らは被上告人に対し、各自金一〇〇万円及び金三〇八円二四銭並
びに右一〇〇万円に対する昭和三六年一一月二〇日から完済に至るまで年一割五分
の割合による金員を支払え。
被上告人その余の請求を棄却する。
訴訟の総費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告人らの上告理由第一点について。
本件債務は確定判決のある旧債務とは発生原因を異にするものであるから、これ
について支払を命ずる原判決は、同一債務の二重判決をなしたものでなく、所論違
法は存しない。論旨は理由がない。
同第二点について。
原判決の所論事実認定は、その挙示する証拠関係に照らして首肯できないことは
なく、民訴法違反の主張は理由がなく、従つて、違憲の主張は前提を欠き、論旨は
すべて採用できない。
しかし、職権を以つて調査するに、債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭
消費貸借上の利息、損害金を支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法四九一
条によりこれを順次に費用、利息及び元本に充当されるものと解すべきことは、当
裁判所の判例(昭和三五年(オ)第一一五一号同三九年一一月一八日大法廷判決)
の趣旨とするところである。
本件について、原判決は、昭和三六年一〇月一日訴外Dは被控訴人(被上告人)
に対する金一〇〇万円の支払債務を目的として、元本同額、弁済期昭和三七年三月
二〇日、利息一ヵ月一分七厘とする準消費貸借契約を締結し、同日控訴人ら(上告
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人ら)はDの右債務につき連帯保証をなしたことを証拠により認定し、控訴人らが
被控訴人に対し金二万円を本件債務の利息として支払つたことは当事者間に争ない
事実として確定した上、右二万円は元本一〇〇万円に対する一ヵ月一分七厘の割合
による約定利率により計算すると昭和三六年一〇月一日から同年一一月六日までの
利息に満たないものであるから、控訴人らは被控訴人に対し各自金一〇〇万円及び
これに対する昭和三六年一一月七日から弁済期である同三七年三月二〇日まで約定
利息を利息制限法所定の年一割五分の利率に引き直した利息、並びに同年三月二一
日から完済に至るまで同割合による遅延損害金を支払う義務がある旨判示したこと
は、原判文上明らかである。
しかし、上告人らに金一〇〇万円の支払義務あることについての原判決の判断は
相当であるけれども、金二万円の利息の充当については是認できない。即ち、原判
決は、利息制限法所定の制限を超過して任意に支払われた金員は利息、元本に充当
されることなく、債権者の取得するところとなるとの判断の上に立つているのであ
る。しかし、本件約定利率である一カ月一分七厘の利息は、元本が金一〇〇万円で
あるから利息制限法一条一項により年一割五分の制限を受けるものであつて、これ
を超過する金員は民法四九一条によりなお利息、元本の順に充当さるべきことは、
前叙説示のとおりであるから、この点に関する原審の判断は利息制限法の解釈を誤
つたものといわなければならず、その違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである
から、破棄を免れない。
そして、原審の確定した事実に法律を適用すると、右金二万円を金一〇〇万円の
元本に対する利息制限法所定の年一割五分の割合による利息に充当すれば、昭和三
六年一〇月一日から同年一一月一八日まで右利息は完済されている計算となり、な
お金一〇二円七二銭の残余があることになる。従つて、上告人らは本件利息及び損
害金として被上告人に対し、右一日分の利息から右残余金を差引いた金三〇八円二
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四銭及び同年一一月二〇日から弁済期である昭和三七年三月二〇日まで年一割五分
の割合による利息、並びに同年三月二一日から完済に至るまで同割合による遅延損
害金を支払う義務がある。
よつて、民訴法四〇八条一号、九六条、九二条、九三条により、裁判官入江俊郎
を除く裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。
裁判官入江俊郎の反対意見は次のとおりである。
私は、債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を
任意に支払つたとき、右制限をこえる金員は当然残存元本に充当されると解すべき
ではないと考える。その理由は、前記大法廷判決における私の反対意見のとおりで
あるから、これを援用する。したがつて、本件原判決は正当であり、本件上告は棄
却すべきものと思料する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 長 部 謹 吾
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 松 田 二 郎
裁判官 岩 田 誠
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